天然染料ー檳榔子（ビンロウジ）染－

台湾の最南端、屏東（ピンドン）県は、かつて、檳榔（ビンロウ）の産地として知られていました。

「噛みタバコ」に似た使われ方をされ、口腔がんなどの健康被害の恐れがあることから、政府が他の作物の栽培を推奨。代替産業としてカカオやコーヒー豆栽培に取り組む農家が増加したことで、檳榔栽培は衰退。何にも使われず、ただただそこにあるだけの果樹たち。

コロナ禍以降、日本では都市部から地方へ移住する人々が増加しましたが、台湾でも同じ傾向がありました。台北でアパレルデザイナーとして働いていた王一帆さんもその一人。奥さんの故郷である屏東市へ移住します。

屏東で暮らし始めた王さんが気になったのが、落ち、朽ちている廃棄されるだけの大量の檳榔の実。クリエイターである王さんは、「この実を有効に使えないか」と模索、かつて、日本で最高級黒紋付がビンロウジで染められていたことを知り、「染料」としての研究を始めます。

▲ビンロウジが出せるのは鴇浅葱（ときあさぎ）色から黒のアースカラーバリエーション。

王さんの願い

衰退した台湾の檳榔産業から、環境に優しい天然染料として新たな価値を生み出していく。
自然を守り、共存していくビジネスモデルを確立させ、高齢者の再雇用で地域の人々のやりがいや安定に繋げていきたい。

「藍染」がJAPAN BLUEとして世界的に知られるようになったように、「ビンロウジ染」をTAIWAN BROWNとして広めて行けたら。

王さんのチャレンジは始まったばかりです。